芝生の上にピンクのヒョウ柄のレジャーシート広げて、ちょこなんと9歳の少女があぐらをかいている。

 彼女の名はマシエリ


 ランチの時間なのだ。


 レジャーシートの端に、シートが巻くりあがらないよう、大きな大きな黒の旅行カバンを置いて、重石代わりにしている。

 開いたカバンのフタには、傘立て用の筒が付いていて、そこに取りつけた日傘の下、マシエリは日差しを避けてアップルパイを食べている。

 白い陶磁器の皿にのったパイを銀製のフォークで一口大に切って、マシエリは口に運ぶ。

「うんま~い! 生きててよかった~!」


 マシエリが満面の笑みで歓声をあげると、


“ドール”がそんなチャラチャラしたモン食うと、腹ん中、錆びるで~。“ポッド”で十分やろが~」


 と傍をパタパタと滞空飛行しながら、ポッドを飲んでいるボーグが毎度の茶々をいれた。


人はパンのみにて生くるにあらずよ、ボーグ。乙女には雰囲気って大事なの。そんな液体燃料だけじゃ滅入ってしまうわ」


 マシエリが、ボーグからツンと視線をそらすと、


「そんなモンかね~。それに、日傘なんて必要ないやろが~。そもそも、日焼けなんてしね~んだからよ~。ケケ


 とボーグはポッドを飲み干して、ゲブッとガスのゲップをした。


「んもう、きったな~い! いちいちうるさいのよ! そんなんじゃ、女の子にモテないわよ


 マシエリがシッシと手の先をふって、ボーグを追い払うと、


「別に、モテたくなんてね~よ!」


とボーグは口をとがらせ、顔を赤らめた。


「アハハ、赤くなった~!」


 マシエリがからかうと、


うっせ~! ポッド飲んだばっかだから、体が熱もってんだよ~」


とボーグは短い手足をバタつかせた。


                (TO BE CONTINUED)