「お! マシエリ、気づいたんか~?」
ボーグが声をあげると、マシエリは左手でおでこを押さえながら起きあがってあぐらをかいた。
「あの猫、プログラム汚染型のマシーンやったで~。このボーグ様が倒したったがな~」
ボーグが嬉しそうに言い、マシエリがボーグの視線の先を見ると、子猫の首が鋭利な刃物でスパッと切り裂かれて倒れていた。
マシエリが悲しげに子猫を見ていると、
「ったくよ~、無防備に手なんか出すんじゃね~よ。危うくおいらまで感染しちまうとこだったんやで~!」
とボーグが声を荒げた。
「ごめんなさい……」
マシエリが素直に謝ると、ボーグはポカーンとした顔でマシエリのおでこを触った。
「なんだよ~。えらくしおらしいじゃねえか~。どっか壊れたか~?」
「……」
無言で猫を見つめているマシエリに、
「さっさと手足、ポンポンッとくっつけて、こんな場所とっととおさらばしようぜ~」
とボーグが言うと、
「まったくう、人を“モノ”みたいにいってえ」
とやっといつものマシエリの顔にもどった。
「“モノ”じゃねえか。おめえもおいらもよ」
ボーグが言うと、
「そんなことじゃあ、女の子にモテないわよお」
とマシエリは唇をとがらせた。
「別にモテたくねーつってんやろが~」
ボーグが短い手足をバタつかせると、マシエリは笑った。